TRX-1 アイテックキット

50MHz DSBトランシーバーキット TRX-1の製作と工夫。

私がアマチュア無線を知ったころは、ラジオで7MHzを聞くとちゃんと音声が聞こえる局とモガモガしてて
聞き取れない局がいました。ちゃんと聞こえるのがAMで、もがもがしているのがSSBだったんです。SSBの
ほうが遠くでもよく聞こえるなどなど・・・ということでSSBの時代になっていったわけです。AMはSSBの局と
はキャリアが邪魔で交信できませんから、SSBと話ができるように搬送波を弱めたDSBというのを考えたん
でしょうね。当時は(今でも?)クリスタルフィルタが高価だったので抑圧搬送波なのに両側波帯を送信するな
んて無駄なことをしていたわけですよね。今の時代にDSBって何の役に立つのか?ノスタルジー・・・?、やっ
ぱり当時と同じく安価で簡単に出来るということでしょうかね。まぁ、バンドに出たときの話題性もあるかもし
れませんし、当たり前なSSBにない何をを求めているの・・・かもしれません。と、いろんなこと考えつつ製作。
 搬送波を抑圧したDSBをつくるにはいくつか方法がある。DBM-ICを使う方法はダイオードに比べてある程
度の利得も得られるので、その後の増幅も比較的に楽ですむことからアマチュア的かもしれない。そんな理
由から、自作機 DSB-1号 DSB-2号 では、DBM-ICのSN76514を使用した。ただし、搬送波の漏れを完
全に抑圧することは簡単にはいかないようだ。ダイオートを使ったジェネレータ(サーキットハウス9MHzSSB
ジェネレータ)を試したことがあるが、キャリアの漏れはずっと少なかった様に記憶している。もしかすると、
挿入損失のために気にならなかっただけかも知れないが・・・。さて、簡単でキャリアの漏れがほとんど無い
というものは無いのか・・・。DBM-ICが違ったらどうだろうか・・・など考えていたら、最近になってアイテック
からDSBのキットが発売されていることを知り、商品化されたものならどうか、DBM-ICの違いは、などを知る
ためにたのしみながら製作した。そして、アマチュア精神?!で、工夫していじくって、たのしみながら自分にと
って使いやすいトランシーバになるようになるように手を加えている。

 それぞれの基板はオリジナルのままでひとまず作っていた。さっそく、気になったのは、
各基板をつないでトランシーバー化する段階でも2回路のトグルスイッチを使って、送受の
切り替えを行うようになっていたところだ。実際の運用では送信と受信を頻繁に繰り返すか
らハンドマイクのPTTで切り替えたいし、本体のスイッチに手をかけて切り替えると振動で
周波数がずれる心配が気になってしまった。そこで、さっそくスピーカーマイクとリレーを
使ったコントロールに取りかかった。マイク用の穴はスピーカー用にして、その上にマイク用
ジャックの穴を加工した。送受のスイッチの取付穴の部分には送信表示のLEDを付けた。

送信電力はケースに組み込む前は20mW程度しか出ない様に思われたが、ケースに組み込んで
調整してみると、100mWは出ていた。しかし、もう少し出力がないと交信する相手がそれなりの
アンテナでなければおそらく見つけてもらえないだろうし、こちらには聞こえていてたとえ呼んでも
応答してもらえないので、まず交信は無理と思われる。そこで1石のリニアを取り付けることにした。

 いろいろ思いついたことを取り入れて組み合わせたアンプです。入力側にはT型のバンドパスフィルタ
を付けた。次に出力が出過ぎるのでおおよそ3dBアッテネータをつけた。トランジスタの入力側のトランス
は43材のトロイダルコアを使って製作、RFCも43材で、RFCからコレクタまでがちょっと長いのでラインを
FB101の中に通した。ベースの3.3Ωはラインを伸ばす役割を兼ねている。VR1kΩのラインも10Ωを通
っているが同様な役割を持たせている。どちらも無くても支障はないだろうと思う。電源は2カ所別々に異
なる電圧を供給している。コレクタ側には電源スイッチを通った13.8Vをそのまま常時加え、ベース側には
AVRユニットから9Vの電圧をリレーで切り替えで送信時のみ78L006を通して供給している。

このトランシーバーから外部の機器をコントロールするため、送信時にアンテナのラインに電圧を供給。

このキットの局発はVXO-88という50MHzD.C受信機用のVXOキットです。
水晶振動子は発振周波数が正確でずれないというのが一般的には常識ですが、
その水晶振動子と直列にコイルとコンデンサーを入れることで水晶の発振周波数
が100kHz程度可変出来るというものがVXOです。しかし、可変幅を広くすると
周波数が不安定で、温度のちょっとした変化などでも勝手に動いてしまうことがある
ので、SSB等で使う場合は50kHz程度が妥当なところではないかと考えています。
そこで目標の可変範囲をSSBで交信する局の多い50.160〜50.210MHz
あたりにしたいと思います。
まず、オリジナルのデータは、水晶=16.880MHz(3rdオーバートーン発振)    
コイルはFCZのVXO3(10μHくらい) コンデンサーは2連ポリバリコン20pF×2を
並列接続で使うので40pF この部品での発振波数は50.100〜240MHz程度で
した。しかし、発振周波数が安定しません。送信中も受信中もどんどんずれます。
 そこで水晶振動子を取り替えました。周波数は50.250MHz(ADS製の普及品)
コイルをVXO3で試したところ(コアを抜いて) 50.180〜225MHzでしたが、コイル
はコアなしで使いたかったので、固定のインダクターをためしてみた。周波数は、
VXO3のコアを数回ねじ込んだときと同じ50.150〜210MHzにしたかったので、
数個ためしてTDKのチップ型8.2μH(NL252018T-8R2J)に決定した。 
発振周波数はきわめて安定している。1時間以上送受信を繰り返してもダイヤル
に全く触れないで大丈夫で、受信機でモニタした音もまったく変化しなかった。
ポリバリコンが壊れてしまってチューニングつまみを回すとガリガリと音がしたので
新品に交換しました。予備で数個買ったのですが、袋からだしてつまみを回したと
ころ、いきなり中のポリフィルムの固定が外れて金属板と一緒に回っていました。
最近のポリバリはとても壊れ(粗悪品?)やすいんだなぁっと認識しました。

このトランシーバのキャリアの漏れと送信出力は次の通り。
5Wリニアをつないで変化を大きくして測定した。
無変調時 5mW     変調をほぼ最大にして    5W
はじめに測定したときは最大出力になるように調整したため? キャリアが結構出ていたが、
出力最大点よりも無変調時の出力=キャリアの漏れと最大変調時の出力の差がもっとも大き
くなるような調整を繰り返して最良点を見つけたところ、上記のような結果となった。また、こ
れでもかっ! とばかりにデータシートには無いが、ヌルポイント調整用にVR=100kΩと56kΩを
追加していみた。ヌルポイントの調整はほとんど関係なしだったが、DBM-ICの出力を1000pF
からは5pFに変更して、さらに抵抗を入れて次の段の入力を出来る限り小さく制限した結果は
とても良好。局発からの入力側は2pFです。結合はなるべく疎にしたほうが良いと考えている。

その他の変更点として、S&出力メーターの付加によってより実用的なトランシーバーに。
AFで振らせるSメーターの回路は、一段のトランジスタアンプで基本いいわけなので、増幅した後
ダイオードでラジケータを動かすための直流を作ります。やってみると振れ方が忙しすぎるので
抵抗とコンデンサで少し動きをゆっくりにしてやります。決まった値なんてないので、もちろん
カットアンドトライです。このトランシーバは受信部ダイレクトコンバージョンなので、しっかりした
フィルタが何もなくて、AFの信号には聞こえない(年寄りだから?)ような周波数の信号まで含まれ
ていました。この信号はスピーカーで聴く分には可聴範囲以外は気になりませんが、チューニングを
30kHz程度ずらしても結構出力されています。もちろんSメーターは盛大に振れっぱなしです。
こうなったら、何かフィルタが必要です。むかし3WAYスピーカを作ったときにはコイルとコンデンサ
でネットワーク回路を組みましたが、あんなものをつけたら大変なので、抵抗とコンデンサで簡易な
工夫をこれまたカットアンドトライしました。とにかくとにかく結果として良かったらOKということで、
チューニングをずらして自分の耳でキーンという音が無くなったらメーターも下がるように調整しました。
回路図にしてみたら・・・・なんともへんてこになっています。


 

自作というくくりで見たときに、DSBトランシーバーはクリスタルフィルターを使ったSSBトランシーバーに比べて
メーカー製と間違えられるような特性に仕上げるのは、私にとっては難しいと思っています。
クリスタルフィルターはキャリアを抑える物ではなく片方の側波帯だけを通過させるという役目ですが、実際に
はキャリアを出さないように調整している事が多く、キャリアを抑えれば、実際には低音が多少出ていないよう
な調整であったとしても、良くできているように感じてしまうので、SSBはメーカー製と区別がつきにくいものを簡
単に作れてしまうと思います。もっとも、メーカー製よりも何か性能が良い物を作りたくて、そのこだわりから自作
する人もたくさんいらっしゃるわけですが・・・。
お楽しみで作る物はいろいろあってそれで良いと思っています。DSBはQSOも含めて楽しい実験のようなもの
です。たとえばDSBでCQを出していると、「この人間違ってLSBで出ている」「AMで出ている」「壊れている」「チュ
ーニングできない!!」「壊れてキャリアが漏れている」「ハムがのっている」「音声の高音が聞こえない」など・・・・・
楽しいレポートがいろいろいただけます。また、DSBであることが分かると、自分もDSBで2−WAYしてみようと
思う方もいて、DSB同士でしか聞こえない独特なビートが感じられることもあってとても楽しい瞬間です。

[インデックスへ]